終活フェスタ2014in東京 開催直前! 終活プレ対談 中尾ミエ×武藤頼胡 日常のなかでもっと自然に「ありがとう」を

武藤
 中尾さんは、以前テレビで御一緒させていただいたときに、私の話をしっかり聴いてくださっていたので、とても嬉しかったんです。
それでその縁で、今年8月の「終活フェスタ2014in東京」のパネルディスカッションに御出演をお願いいたしました。今回のパネルディスカッションのテーマは「私の終活 ありがとうを伝えたことはありますか?」となっております。
終活の第一歩として、まずは「ありがとう」ではないか、と。いろいろな人との関係性のなかで人は生きていますが、日本人はお世話になった人、自分の家族にもなかなか「ありがとう」って言えない方が多いのですよね。
中尾
 そうねえ。でも、私だったら誰にでもありがとうって言うわよ? 家族にも周囲の人たちにも日常的に言っているもの。
武藤
 そうですか。私は、あまり言えていないんです。
中尾
 家族だと、関係が馴れ合いみたいになって、言うきっかけがつかめないのかもね。
 私の家でもそうだけど、まずは「おはよう」かな。仕事場で挨拶をしないなんて絶対に許されないけど、家族だとそれでもん済んじゃう。でもね、朝に「おはよう」って言わない家は、もうずっと、家庭の中に挨拶がないのよ。
 「おはよう」も「おやすみ」もない関係を続けているから、人生の終わりでも「ありがとう」って言いにくくなるのよ。
武藤
 家族だと「言わなくても分かるでしょ」っていう部分がありますからね。
中尾
 「ありがとう」って、本来、そんなに改まったものではないでしょ?
武藤
 はい。
中尾
 なのに、普段言わないから。
武藤
 自分の息子に「ありがとう」も「助けて」も言えないっていう高齢者さんが多いんです。そういう人たちは、まずは「おはよう」から始めればいいんですね。
中尾
 出かけるときは「行ってきます」「行ってらっしゃい」。帰ってきたら「ただいま」「おかえり」。それを毎日やるのよ。挨拶が行き交う家には、「ありがとう」も自然に生まれるわよ。
武藤
 はい。
中尾
 そうして人生の最後の最後に、家族やお世話になった人、仕事仲間へちゃんと「ありがとう」を伝えてから、逝ければいいんじゃない?
武藤
 感謝で閉じる人生っていいですね。笑顔だったらなおいいですね。

お年寄りが笑える環境をつくる「終活」

中尾
 いま、規模の大きな特別養護老人ホームのほかに、小さな住宅街の中にもグループホームができて、お年寄りが暮らしているでしょう。
武藤
 はい。
中尾
 でもね、特養でもグルームホームでも、笑っているお年寄りが少ないのよ。
みんな、やることなくて、辛そうにしてて。テレビをボーっと観てたりして。
武藤
 そうですね。
中尾
 それに、あの暗い雰囲気。せめて音楽くらいかけて欲しいわね。お年寄りの希望を聴いて、演歌でもいいし。とにかく音がないの。数日前なんだけど、そういう現場に遭遇してね、「ああ、私は、年取ったら笑おう」って思ったのよ。
武藤
 へえ。
中尾
 あなたが年を取ってから、そういう、お年寄りが笑っていられないような環境で生きたい?
武藤
 生きたくないですね。
中尾
 私は、自分が笑えないようなところには行きたくないわね。
これ、おかしいのよ。若い世代が、あそこに入っているお年寄りたちのことはちゃんと考えないで、笑える環境もつくってあげない。しかも、自分たちはそういう環境には行きたくないなんて。
武藤
 そうですね。
中尾
 それこそ終活でしょう? 自分たちが年を取ってからも住みたい環境をつくらなきゃ。それがお年寄りのためにもなるんだから。
今はまだ自分が元気だからね。自分がそういうところへ行く年齢ではないからアパートをつくって、知り合いたちに入ってもらって、一人暮らしの人、みんなが笑える環境にしているの。
武藤
 そうなんですか。
中尾
 それから、動ける年寄りは動かさなきゃ駄目!
武藤
 そうですよね。
中尾
 仕事をさせなきゃ駄目! 人間にとっての一番の苦痛は「やることがないこと」なの。ところが今の高齢者施設は「なんにもしなくていいですよ」ってところをウリにしているわけ。だから、お年寄りに元気がないの。当たり前でしょ!?
武藤
 食事だって作ってもらって、上げ膳据え膳で。
中尾
 でしょ? …これはね、じつは拷問なんですよ。
武藤
 え!?
中尾
 朝起きて、「ああ、また何にもやることのない一日が始まるのか」って。その毎日が続くわけだから。
武藤
 辛いですね。
中尾
 私は、なにも、動くのが辛い人にまで仕事させろって言っているわけじゃない。でも、動ける人から仕事を奪ったら、笑顔なんて生まれないわよ。
武藤
 健康寿命も延びませんね。
中尾
 私たちが映画(『人生、いろどり』2012年公開)を撮らせてもらった徳島県の上勝町(かみかつちょう)ではね、モミジとか笹の葉っぱを高齢者が集めて、それを料理の妻物(つまもの)として販売して大成功したわけ。お年寄りたちは仕事があるから、ほんと、元気なのよ。
元気の理由は、お金だけじゃないの。自分に仕事があること。仕事ができること。それが人に生き甲斐をもらたらすのね。
上勝町でやっているような、お年寄りが元気になれる、笑っていられる、そんな終活をしていきたいわね。
武藤
 そうですね。本日は、どうもありがとうございました。

中尾ミエ/Mie Nakao

昭和21年生まれ。
37年「可愛いベイビー」で歌手デビュー。 一世を風靡する。
歌手のほか、映画やドラマ、舞台での活躍は御存知の通り。
バラエティー番組への出演も多く、持ち前の細やかな気配りと洒落たおしゃべり、
姉御肌のトークは絶大な人気を誇る。

 人生の先輩である方からいろんな話を聴ける…。それはこの仕事をしているお蔭です。終活に取り組んでから、素敵な方とのたくさんの出逢いがあります。本当に感謝しています。
本日は、中尾ミエさんとお話ししました! ミーハーなことですが(笑)、中尾さんのお名前を聴いただけで、頭のなかにあの「可愛いベイビー、ハイハイ!」というハスキーボイスが浮かんでくる大スター。私にとっては雲の上の方です。
その中尾さんから、終活についてさらに学ばせていただくことができるなんて、とっても幸せでした。「お年寄りが輝ける終活」。素晴らしいですね。
時間の関係で、中尾さんとのお話はここまででしたけれど、終活フェスタのパネルディスカッションで、もっともっとお話がしたいです。

今日のヨリコ