【終活日誌 2014年12月号】
~吉田健一 住職編その2~お坊さんから聞いたちょっといい話
好評連載中の「お坊さんから聴いたちょっといい話」。
今月は、ニッポン津々浦々紀行で「つるし雛」の取材をさせていただきました浄信寺の吉田住職にお話を伺いました。
それでは早速ご覧ください。
「さよならは別れの言葉じゃなくて…」
言わずと知れた「セーラー服と機関銃」の歌い出しです。では、一体何の言葉なの!?というと「再び会うまでの遠い約束」だそうです。なるほど、とても深い言葉ですね。
日本語の別れ言葉には不思議な響きがあります。「さようなら(左様なら)」、「じゃあ」、「では」、「また」、本当の別れを宣言するのではなく、未来に再 会が約束されているかのような余韻を残しています。「いつか会える」いや、「会いたい」からこそ、そこで終止符を打たずに、現在進行形の問いを残したまま 未来に待っている再会に向け、各々の物語を続ける。つまり、日本語の別れの挨拶は、その先の再会へ向けての約束であり、そのスタートを宣言する言葉なのか もしれません。
東日本大震災後のあるアンケートに「ぜひ備えておかなければいけなかったと思うもの」という質問があり、多くの方が「家族の連絡手段、集合場所の確認」と 答えているのが目に止まりました。今ほど家族との絆の大切さを実感する時はないでしょう。地震などの自然災害に限らず、大切な家族との死別もまた、私たち の日常を突如分断します。そして、愛する人との別れは自身の人生における最大の苦しみであり、その喪失はお互いの間に築き上げてきた日々の物語の終止符を 意味するものかもしれません。 |
残念なことですが、あなたが旅立った後、あなたはその腕で家族を抱きしめることも、慰めの言葉をかけることもできません。一方で、あなたが遺した 言葉や思いが、他の何よりも家族を支えることもあるのです。大切な人との現在を掛け替えのないものと感じ、その絆が永久(とこしえ)にあることを願った 時、そして遺される家族がその悲しみと向き合いながらも、自分の人生を生きて行くためにも、あなたが今備えておくべきは、それらの人々と、「その日の先」 の物語を平生から共有しておくことではないでしょうか。「自分らしいお葬式」の形態やお墓のあり方を考えておくことは大切なことです。でも忘れてならない ことは、あなたの死はあなたにとっての「エンディング」でも、遺される人には悲しみの「スタート」ということです。
人は未来への希望を失うことで、今を生きる力を失います。しかし、未来に光が見えていることで、たとえどんな困難な中にあっても自ら生きる力を引 き出すこともできるのです。「信仰」とは、不確定な未来に対する恐れや不安を手放し(仏様にお任せし)、今を主体的に生きる道を選択することです。日本人 は、お葬式や法事、年中行事や日々のお参りなどの儀礼を通じ、「死の向こう側」のへ連絡方法、集合場所を確認してきました。これらを家族や世代間で伝承し 信仰することは、私も、そして愛する人も、共に「明日をも知れぬ」存在であるという現実を見つめ、それでも未来を信じて「今を生きる」ための術だったのか もしれません。
いつか必ずやってくる「さようなら」の日。大切な人だからこそ、会いたい、いやきっと会える…、その願いはやがて浄土で再会するまでの遠い約束として、精一杯にあなたの「今を生きる」ことが亡き人への大切な供養です。 |
あんなこと、こんなことがあればこそ再会の喜びも深いもの。あなたの心のポケットに沢山詰め込んだ人生の想い出話を、ひとつひとつ取り出して、蓮の台(うてな)でゆっくりと語り合うその日まで、「さようなら」から始まる新しい物語があるのです。
浄土宗 浄信寺 住職 吉田健一
浄信寺[http://www.jyoushinji.net/] |
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